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東日本大震災関係

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思い出探し、ペットと再会 暑い防護服、我が家にわずか2時間 福島・川内村
産経新聞 5月11日(水)7時57分配信

散りゆく桜、人けのない山里に響く鳥やカエルの鳴き声…。他市町村に先駆け、福島県川内村で10日に実施された初の一時帰宅。久々に自宅に戻った住民らは思い思いに持ち出し品の整理にあたった。わずか2時間の滞在。中には目的を達成できず、肩を落とす住民の姿もあった。防護服の着用はとても暑い。こうした帰宅が今後も繰り返されることになりそうだ。(小野田雄一)

                   ◇

  ◆結納の写真

 住民が立ち入った警戒区域の民家は、石垣や屋根が崩れ、ブルーシートが掛けられた家もあり、震災の爪痕が残る。警戒区域に入り、山あいの道を走ること約30分。車窓から見える畑には何も植えられておらず、春というのに灰色じみていた。

 住民らはマイクロバスでそれぞれの自宅まで送られた。バスを降りる前には、東京電力の社員が放射線量を測定した。

 「このアルバムを取りに来たんだ」。同県郡山市の避難先から約45日ぶりに自宅に戻ったという農業、小林信一さん(65)は、戸棚から出した写真アルバムを眺めて目を細めた。

 アルバムは次女の一枝(かずえ)さんの結納時のもの。一枝さんは3月26日に結婚式を挙げる予定で、すでに親類や友人に招待状を発送していたという。しかし原発事故ですべてが白紙になった。

 現在、一枝さんは婚姻届を出した夫とともに同県白河市に住んでいる。「何としても式を挙げてやりたい。親の務めだと思う」。ポリ袋に印鑑やアルバムなどを詰めながら力を込めた。

 ◆見知らぬ犬

 生命保険や火災保険の証書を取りに来たという林業、大和田亥三郎(いさぶろう)さん(76)、ロクさん(74)夫妻が自宅に戻ると、犬と猫が飛びついてきた。ペットの雄犬のココ(6)と雄猫のメコ(3)。ココは亥三郎さんに体を擦りつけ、クーンクーンと絶えず鼻を鳴らした。

 4月22日の警戒区域指定の直前、夫妻は自宅に戻り、餌をありったけ置いてきた。約20日ぶりの再会にもかかわらず、2匹は元気いっぱいだった。しかしペットの連れ帰りは行政側が別途行うため、この日連れ帰ることはできない。

 ロクさんが驚いたのは、ココの傍らに見知らぬ黒い雌犬がいたこと。体は痩せ、首輪がずり下がっている。耳には何匹ものダニが寄生し、体をふくらませていた。飼い主が避難する際、連れて行けずに野に放したのだろう。

 黒い雌犬はロクさんが縁側の戸を開けると、すぐに家に入ってきた。ざぶとんに座り、まるで自分の家のようだ。ロクさんは「あんたどこの子なの。家族が誰もいなくなっちゃって、寂しかったねえ…」。そういって優しく頭をなでた。亥三郎さんは「早くもう一度、みんな元通りに一緒に住める日がくるといいが」と顔色を曇らせた。

 ◆牛の姿なく

 牛の畜産を営む秋元哲雄さん(74)とカツ子さん(73)夫妻は、警戒区域の指定前、飼育していた肉牛10頭を牛舎から出した。餌がなくなり、餓死させたくなかったためだ。一時帰宅で牛を見つけるつもりだったが、数十分間探し歩いても、牛の姿はどこにもなかった。

 カツ子さんは自宅に戻り、「どこか山の方で群れを作って暮らしてるんでしょう。足がもう棒のように疲れました」とふくらはぎをさすった。哲雄さんも「警戒区域外に住む村民が牛を最近出荷したところ、高値で売れたと聞いた。うちはそもそも警戒区域内なので出荷すらできない。原発の事故は非常に残念です」と肩を落とした。

 カツ子さんは庭に咲く花を見つめながら「きれいに咲いたのに、見る人がいないんじゃかわいそう」と力なく笑った。何年もかけて手入れした庭には、ドウダンツツジや桜、桃、チューリップなどの花木が、いつもの年と同じように美しい花を咲かせていた。


一時帰宅の福島・川内村住民、政府の「自己責任」押しつけに激怒…震災から2か月
スポーツ報知 5月11日(水)8時3分配信

 福島第1原発から半径20キロ圏内の「警戒区域」内にある福島県川内村の住民54世帯92人が10日、警戒区域に入り、一時帰宅した。同区域内に指定された9市町村では初めて。午前中の説明会で国側が「(住民らは)自己責任で立ち入る」との同意書への署名を求めたことに、住民からは「責任を押しつける気か」などと反発の声が上がった。防護服を着た住民は、わずか2時間の“滞在”で、自宅から思い出の品などを持ち出した。11日で、東日本大震災からちょうど2か月を迎える。

 待ち望んだ一時帰宅に先立ち、住民らは福島第1原発から20キロ圏外にある“中継基地”の村民体育センターにバスで到着した。川内村などによると、警戒区域から避難している約120世帯のうち、原発から半径約15~20キロに家がある54世帯の21~85歳の92人が参加。原則1世帯1人だが、多くが2人参加を申請した。

 村民らは政府が用意したバスに分乗。それぞれの自宅近くへ送られたが、午前中に行われたセンターでの説明会で不満が爆発した。国側が「(住民らは)自己責任で立ち入る」とする同意書への署名を求めたことに「責任を押しつける気か」と住民は強く反発。「国や東京電力は責任を取らない気か」「私たちは被害者なのに」と怒りの声を上げ、国側は「十分、注意してほしいとの趣旨だ」と釈明に追われた。東電の担当者が放射線対策の防護服や線量計の使用法の説明を始めると、村民の1人が「おまえは誰だ、名乗れ」と大声を上げ、担当者が「申し遅れました」とわびる一幕もあった。

 政府の現地対策本部担当者は、同意書について川内村と相談して決めたとし「放射能汚染を含めたリスクが存在することを、村民に了解してもらうことが目的」と説明したが、政府の責任回避とも取られかねない手法に、不満が漏れた。

 白い防護服姿の村民らの滞在時間は約2時間。持ち出し品は、1世帯で縦横約70センチの透明のポリ袋1枚に入る分量に限定された。夏物の衣類や貴重品、思い出の写真などを持ち出す人が目立った。新潟県に避難中の秋元トヨ子さん(67)は、夫のために日本酒を持ち出したが、食品のため没収。「がっかりした。今度はいつ帰れるのか」と肩を落とした。

 対策本部によると、滞在中に受けた個人の累積放射線量は暫定値で最低1マイクロシーベルト、最高で10マイクロシーベルト。一時帰宅した場所付近の空間放射線量は毎時0・12マイクロシーベルトから5・80マイクロシーベルトだった。92人全員が放射性物質の除染の必要はなく、汚染した持ち出し品もなかった。また、福島県と環境省は、警戒区域内で犬9匹と猫3匹を保護し運び出した。

 わが家に行くだけなのに、防護服姿で手には線量計、時間制限付きという理不尽。川内村の遠藤雄幸村長は「こんな状況に誰がしたんですか。一日も早く、元の生活に戻りたい」と漏らした。

 ◆警戒区域と計画的避難区域 災害対策基本法は、生命や身体への危険を防止するため必要な場合、市町村長が「警戒区域」を設定し、区域内への立ち入りを禁じたり、退去を命じたりできると定めている。無断で立ち入ると10万円以下の罰金などが科されることも。今回は原子力災害対策本部長の菅首相が、4月22日に福島第1原発から半径20キロ圏内の9市町村を警戒区域に設定。20キロ圏外でも1年間の積算放射線量が20ミリシーベルトを超える恐れがある地域は、指定から1か月をメドに避難を求める「計画的避難区域」に設定した。


福島第1原発:一時帰宅 足の不自由な母娘、参加困難
(毎日新聞)

 東京電力福島第1原発事故で立ち入りが規制されている警戒区域(半径20キロ圏)への一時帰宅で、福島県南相馬市の足の不自由な母娘の参加が困難な状況になっている。国は「移動に支援を必要とする者は対象としない」との見解を示し、同市も緊急事態発生時の他の参加者への影響を懸念して「残念だがあきらめてもらうしかない」。予行演習となる「トライアル」が3日行われるなど準備が進むが、同様の理由で参加できない住民は多数いるとみられる。

 一時帰宅を希望しているのは、南相馬市小高区から市内の警戒区域外に避難中で、左足が不自由なため、つえ無しでは歩けない菊池キヨ子さん(80)と、脳梗塞(こうそく)で左手足がまひしている長女正子さん(59)。

 東日本大震災が起きたのは、正子さんがベッドからトイレに行こうと手すりにつかまった時だった。

 キヨ子さんは近所の知人に連れられ外出中。正子さんは1人で外に出られないため、「助けて」とベッドにしがみついていたという。2人はその後、近所の住民に連れられて近くの小学校に一時避難した。

 3月12日朝に自宅へ戻ったが、原発で水素爆発があったことをニュースで知った。「早く逃げねば」。2人だけでは遠くには避難できない。助けを求めて電話をかけたが、どこもつながらない。近所の人は既に、ほとんどが避難していた。

 「待つしかないな」。2人は誰かに気づいてもらえるまで待つことにした。冷蔵庫にあった鶏肉やコンニャク、タマネギ、米でしのいだ。家は雨漏りし、17日になると、食料が底を突きかけた。「どうすべ……」。そんな時、電話が鳴った。民生委員からだった。自衛隊員に救助され、やっと避難できた。

 一時帰宅は2人で行きたいと望んでいる。キヨ子さんの夫の位牌(いはい)や預金通帳、保険証などを持ち帰りたい。自宅に残した愛犬「クマ」も気がかりだ。ただ、2人には介助が必要になる。

 南相馬市は「市民の要望は国に上げる」とするものの、「原発で突発の事態があった場合、バスに速やかに戻れない方には遠慮してもらいたい。乗り合わせている人まで犠牲にはできない」と説明する。経済産業省原子力安全・保安院は「要望があれば自治体と協議すべきものは協議する」と説明するが、実現は困難な見通しだ。

 同市によると、警戒区域内居住で自力歩行が困難な住民の数については、「相当数いるはずだが、把握できていない」という。他の自治体でも、役場機能を区域外に移転した際に資料を残したままの所があるなど、実態の把握は困難だ。

 2人は市内に建設される仮設住宅への入居を申し込んだ。放射線量の高い区域にある自宅に、震災前と同じように住めるとは考えていない。それでも、正子さんは言う。

 「自分の家なのに一度も帰れないのはあんまり。一度だけでもいい。家に帰らせてください」【鳥井真平】

[ 2011年5月4日11時17分 ]


警戒区域内に取り残されたペット 環境省が現地調査へ
2011.4.27 23:51

 東京電力福島第1原子力発電所から半径20キロ以内の地域が「避難指示区域」から、立ち入ると罰則規定のある「警戒区域」に切り替わったことで、区域内に残された動物の保護が改めて問題となっている。環境省はペットの連れ出しを検討しているが、どの程度のペットが取り残されているのか実態を把握できていない。このため福島県は28日から5月2日まで、同省とともに現地調査を行う。(油原聡子)

 建物が崩れ、信号が停止した町を、首輪をつけたままの犬や猫が徘(はい)徊(かい)する。やせ細った体は骨が浮き上がり、車を見かけるとエサを求めるように近寄ってくる-。ペットの救出活動を行っていたNPOなどによると、警戒区域内では、残されたペットたちのこうした姿が目につくという。

 福島県によると、震災前の警戒区域9市町村の犬の登録数は約5700匹。現在、何匹が残されているのかは不明だ。

 当初は民間団体やNPOがボランティアでエサやりなどを行っていたが、22日から警戒区域に切り替わり、区域内に立ち入ると罰則が加えられることから、各団体も立ち入りに躊(ちゅう)躇(ちょ)。環境省や福島県には「何とかして助けてほしい」との電話やメールが殺到しているという。

 富岡町では、庭のおりに残された2匹の犬のうち、体格の大きな1匹が生き残り、もう1匹は頭部だけが白骨化した状態で死んでいるのが確認された。共食いしたとみられる。飼い主の親族の女性(36)は「早く戻れると思い、エサと水は置いていったのだが…」と声を詰まらせる。。

 環境省では、一時帰宅の際に住民がペットを連れ出す方向で検討を進めている。ただ、避難の際に係留を解かれてしまった犬なども相当数いるとみられ、うまく“再会”できるかは分からない。「一時帰宅の連れ出しを待つだけでは不十分で、積極的に立ち入ることが必要だ」と環境省の担当者。28日に現地調査を行い、獣医など専門家チームによる救出も検討している。

 4月上旬に浪江町などの避難指示区域で救出活動を行った関西のNPO法人の男性(28)は、警戒区域に切り替わって以降、救助活動を行っていない。「動物の命を救いたい気持ちはあるが、地元に迷惑をかけることを考えると行けない。一刻も早く、警戒区域の動物を管理する必要がある」

   野犬繁殖を危惧

 一方、動物の死体などをエサにして生き残った犬が、野生化して繁殖を繰り返し、野犬の増加を招く可能性も指摘されている。

 男性は「NPOで保護した犬は40匹近いが、そのほとんどが不妊手術をしておらず、現地では交尾する犬も見かけた。このままでは野犬が大量繁殖してしまう」と危惧する。

 警戒区域内の動物の救助を政府に求めているNPO法人「地球生物会議ALIVE」(東京都)の野上ふさ子代表は、「高濃度の放射線を浴びた犬がエサを求めて、除染されないまま区域外に移動する可能性もある」と指摘している。



福島“警戒区域” 家畜殺処分の作業開始
(TBS動画ニュース)

福島では、福島第一原発の事故で立入禁止となった警戒区域に残され、衰弱した家畜について、県が25日から殺処分するための作業を始めました。

 福島第一原発から半径20キロの警戒区域内では、牛や馬などの家畜の世話ができず、家畜が衰弱して死んだり、野放しになるなどの問題が発生しています。そのため、福島県では、25日から防護服を着た獣医師などが警戒区域を巡回し、死んだ家畜に消石灰を散布して消毒するほか、衰弱した家畜については所有者の了解を得たうえで殺処分を行う予定です。また、野放しになっている家畜についても、殺処分や畜舎に戻すなどの処置が行われます。

 殺処分について、20キロ圏内の酪農家は悔しさをにじませます。

 「はっきりした説明もなしに、範囲で一律に判断されるのは残念でならない」(20キロ圏内の酪農家)
 「(Q.馬や牛に声はかけましたか?)声もかけられなかった。ごめんなさいという気持ち」(南相馬市の畜農家)

 死んだり殺処分された家畜の補償について、県では現行の法律で対応できないとして、今後、国と協議することにしています。
(25日11:35)


警戒区域の家畜殺処分 福島県、所有者同意で実施へ
産経新聞 4月25日(月)7時56分配信

 福島県は24日、東京電力福島第1原子力発電所周辺で立ち入り禁止となった警戒区域内で、避難時に畜舎に残したり、放牧したままになっている牛や馬などの家畜について、所有者の同意を経て殺処分する緊急対応をとることを決めた。25日から5月末まで順次実施する。

 県の昨年10月時点でのまとめでは警戒区域内には牛4千頭(297戸)、豚3万頭(9戸)、鶏63万羽(25戸)、馬100頭(45戸)が飼育されている。

 原発事故から時間がたつにつれて市街地などで徘徊(はいかい)する家畜が確認されている。また“野生化”した家畜が民家などを荒らす恐れが指摘されており、畜舎内で死んだ家畜が放置されたまま衛生上の問題が発生する恐れもあるという。

 県家畜保健衛生所や畜産団体の獣医師らが福島県警の協力を得て対象9市町村のうち放射線量が高い大熊、双葉、浪江町などを除き、各市町村に1日4時間程度、防護服で立ち入る。

 放牧家畜のうち健康なものは畜舎に戻す考えだが、瀕死(ひんし)の状態や放置されたままの家畜は耳の個体識別用の「耳標」などで所有者を確認。所有者が同意した場合に限り殺処分する。死んだ家畜には消石灰をまき、ブルーシートをかぶせて害虫発生を抑える。

 福島県の畜産家の間からは家畜を警戒区域の外部に出し、保護する「圏外移送」の要望が強く出されていた。しかし、国からの具体的な回答はなく「国の方針が決まらず難しい」(同県)と「圏外移送」を断念。強制的な殺処分を定めた家畜伝染病予防法で原子力災害を対象として定めていないため、所有者の同意を前提に殺処分する苦渋の選択に踏み切った。


20キロ圏内、残された家畜を救え
(TBS動画ニュース22日17:53)

20キロ圏内の厳しい現実を捉えた映像です。警戒区域が設定される直前、動物愛護団体が家畜の牛を救助するため20キロ圏内に立ち入り映像を撮影しました。

 この映像は今月19日に撮影されたものです。滋賀県の動物愛護団体が福島県浪江町にある畜産農家に残された牛の救助に向かったのですが・・・。

 「えらいことになってる。大丈夫、大丈夫」(動物愛護団体LOVE&PEACE Pray・蔵田和美代表理事)

 この牛舎は、福島第一原発からおよそ10キロの場所にあります。飼主も避難せざるを得ず、およそ100頭の牛が飼われていたのですが、生き残ったのは3分の1に満たない数でした。

 自力で立てなくなった牛に水を与えると、よほど喉が渇いていたのかあっという間に飲み干します。持参したエサを牛に与えたり点滴をほどこしたりしますが、たった5人のスタッフでは手がつけられない状況でした。私たちは避難している牛の所有者に会うことができ、映像を見てもらいました。

 「牛の生命力に私の方が救われたような気がする。私どもが入ってはダメなところに(動物愛護団体が)危険をかえりみずにやってくれている。本来は国にやってもらいたい」(牛の所有者・佐藤貞利さん)

 福島県によりますと、20キロ圏内には3300頭の牛と3万匹の豚、そして63万羽の鶏が残されているということで、その姿は多くの課題を突きつけています。(22日17:53)


牛3千頭・豚3万匹、原発20キロ圏に…餓死か
読売新聞 4月19日(火)14時33分配信

 東京電力福島第一原子力発電所の事故で、避難指示区域(原発の20キロ圏内)に牛約3000頭、豚約3万匹、鶏約60万羽が取り残されたことが19日、福島県の調べでわかった。

 避難指示から1か月以上が過ぎ、すでに多数が死んだとみられる。生き残っている家畜について、畜産農家らは「餓死を待つなんてむごい。せめて殺処分を」と訴えるが、行政側は「原発問題が収束しないと対応しようがない」と頭を抱えている。

 県によると、20キロ圏内は、ブランド牛「福島牛」の生産地や大手食品メーカーの養豚場などがあり、畜産や酪農が盛んな地帯。しかし、東日本大震災発生翌日の3月12日、同原発1号機が爆発し、避難指示が出たため、畜産農家や酪農家は即日、家畜を置いて避難を余儀なくされた。


<福島第1原発>県がスクリーニング検討…計画避難区域の牛
毎日新聞 4月19日(火)2時33分配信

 福島県は、福島第1原発から半径20~30キロ圏内や計画的避難区域の肉用・乳用牛について、放射線量を確認するスクリーニング調査を行う方向で検討を始めた。同県は、牛約1万頭を移動させる方針を示しており、受け入れ先の懸念も考え、対応を決める。

 県などによると、20~30キロ圏には今も「牛を見殺しにできない」という畜産農家が相当数残っている。県は農水省と協議しながら県内外の受け入れ先を探しているが、放射性物質の影響は肉牛と乳牛で異なり、「全頭の受け入れ先が確保できるか分からない」(畜産課)のが現状という。スクリーニング結果によっては除染作業が必要な牛が出てくることも予想される。

 同課は「畜産農家に避難してもらうことと、福島の食の安全を守ることを同時に実現するには牛を移すしかない」としている。【古関俊樹、種市房子】



福島の牛を県外へ

東京電力福島第1原発の事故を受け、福島県は15日、国から屋内退避を指示されている原発から半径20~30キロ圏と、放射線量が高い「計画的避難区域」の肉用・乳用牛を県外に移動させることを決めた。飯舘(いいたて)村や葛尾(かつらお)村の計約1万頭が対象で、肉や原乳から放射性物質が検出されるのを防ぐ。

 県内では餌になる草が放射性物質で汚染されている可能性があり、栃木県が既に受け入れを表明していることも踏まえて移動先の県を決めるという。運搬時の放射線量検査や、高い値が出た時の除染も実施する方針だ。

 JAそうまによると、飯舘村の和牛ブランド「飯舘牛」の出荷数は年間約200頭、販売総額は約1億6000万円。畜産担当者は「JA独自の引き受け先探しが難航していたのでありがたい」と歓迎し、「餌などの費用を誰が負担するのかなど詳細を聞きたい。畜産農家が牛の近くに住んで飼育できるよう配慮してほしい」と話す。

 一方、同村伊丹沢で26頭を飼う山田長清さん(60)は「大きな牧場で多くの頭数を飼育することには賛成できない。牛に目が届かなくなる」と否定的。家族のために避難はするが、避難先から自宅に通って飼育を続けたいという。【種市房子、内橋寿明】

毎日新聞 2011年4月15日 20時14分


原発30キロ圏内の荒涼とした光景 犬が野犬化、道路を牛が集団横断
J-CASTニュース 4月8日(金)20時12分配信

避難指示などの出ている福島第1原子力発電所から30キロ圏内で、ペットや家畜が野放し状態になっている。犬は群れをなして野犬化し、道路を牛が闊歩している。

 ネット上でニュース動画を配信している「ビデオニュース・ドットコム」が2011年4月6日、30キロ圏内の様子を撮影した動画を公開した。

■ストレスで凶暴化する犬も

 タイトルは「原発避難区域は犬や牛の群れが闊歩する無法地帯に」。3日に撮影されたもので、地震で損傷した道路を福島第1原発向け北上。その様子を車中から映している。

 原発から21キロ、福島県双葉郡楢葉町近辺で歩道を歩く4頭の犬の群れと遭遇する。首輪を付け、柴犬やラブラドール・レトリーバーのような犬もいる。元は皆飼い犬だったのだろう。原発から2キロ地点でも首輪を付けたブルテリアが道路の真ん中に登場。車から降りた撮影者に近づき、魚肉ソーセージを貰っている。

 撮影した日本ビデオニュース社の神保哲生さんによると、現在30キロ圏内はほぼ無人状態。1~2時間の取材中、すれ違った車も数台だけだという。

 ある動物愛護団体によると、20キロ圏内の避難指示が出た地域では、当初「1日2日で帰れる」と思われていた。そのため、多くの飼い主が犬を繋いだ状態で避難したが、長引くにつれ、時折戻ってきた近所の人が放してあげているのだという。

 「うちの団体は被ばく覚悟で10キロ圏内にも入って犬や猫の救出を行っています。繋がれた状態の犬は死んでしまっていることも多く、報告を受けた飼い主さんが泣き崩れることもありました。近所の方がエサをまとめて撒いていくので、生きている犬もいるのですが、中にはストレスで凶暴化する子もいて、犬も心のケアが課題です」と話す。

■放たれた牛、「生きててくれれば」

 さらに異様なのが、野放し状態になった牛だ。ビデオニュースの動画では、原発から1.8キロ地点で4~5頭の黒い牛の群れが出てきて、道路を横断。付近の草を食べている。

 福島県畜産農業共同組合連合会によると、30キロ圏内には乳牛や和牛などが1万頭ほどいる。避難する際に「繋がれたままだとかわいそう」と外に放した畜産農家があるという。

  「家族同様の思いで牛を育てている畜産農家もあります。青草や生け垣を食べているみたいですが、福島はまだ寒いですし、そんなにはありません。農家は『なんとか生きていてくれれば』という思いです。20キロ圏内に戻ってエサをやっている農家もいます」

と話す。また、20キロ圏内は「避難指示」なので国の補償対象になったとしても、20キロから30キロ圏の「自主避難」では分からない。

  「死んだまま放置される牛もいて、腐敗が進めば伝染病も心配。畜産農家は皆怒っています。放射性物質が出たら売ることは出来ませんし、国と東電は責任を認めて、補償するとはっきりさせなければいけません」


被災ペットの保護を支援 環境省、施設整備に補助
 環境省は31日、東日本大震災で被災したペットを動物愛護センターなどで保護している自治体が仮設プレハブなどの一時保護施設などを整備する際、費用の半額を財政支援することを決めた。

 被災自治体は、飼い主とはぐれたり避難先の施設に同伴できなかったペットを愛護センターや保健所などで受け入れているが、「数が増えすぎて収容しきれない」との声が上がっていた。

 助成先は、同省が4月以降に自治体側の希望を募って決める。避難所の周辺にもペットの居場所をつくるためテント24張りと動物用ケージ1777個を購入、希望自治体に配布する予定だ。

 同省は「被災者の心の支えにもなるペットの受け入れをできる限り支援したい」としている。

2011/03/31 22:53 【共同通信】


「ボランティアは押し掛けていい」
ニューズウィーク日本版 4月5日(火)13時14分配信

今たくさん来られても困る──東日本大震災後にそんな「ボランティア迷惑論」が広がっているが、本当にそうなのか

 被災者のために何かしたいが、何をしたらいいのか分からない──東日本大地震から3週間以上が経つなか、こうした「善意のやり場に困った人」の話をよく耳にする。震災直後からひとり歩きし始めた「迷惑ボランティア」という言葉が、被災地に行って力になりたいという人を躊躇させているのだ。

 実際のところ、今ボランティアが押し寄せたら、被災者にとって本当に迷惑なのか。関西学院大学災害復興制度研究所長の室崎益輝教授に、本誌・小暮聡子が聞いた。

          * * * * *

──ボランティアを自粛する動きがあるが、実際のところ人数は足りているのか。

 今回の被災地は阪神淡路大震災の何倍もの範囲に及ぶので、何倍ものボランティアが必要だ。にもかかわらず、ボランティアが集まってくるペースは阪神のときと同じか、もっと遅い。ここ数日で状況は少しずつ変わってきているが、私の計算では1日2万人くらい集まるべきところが、1000~2000人レベルにとどまっている。

 受け入れ態勢が出来ていないとか、準備不足で行くと現地に迷惑がかかるという声が流布されたことで、ボランティアの動きにブレーキがかかっている。

──「迷惑ボランティア」という言葉もあるが。

 阪神淡路大震災のときはボランティアが大勢来たが、被災者はちっとも邪魔とは思わなかったはずだ。迷惑に思っていたとすれば、登録したり名簿を作ったりするのに、一度に来られたら対応しきれないという行政だろう。

 今回、ボランティアを自粛させている1つの原因は、地元のボランティアセンター自体が被災したため、ボランティアを受け入れる機能を失っていること。受け入れ態勢が出来ていないので、少し待ってくださいということになる。

 被災者は来てほしいと思っている。家には物もないし、人も来ない。本来ボランティアというのは被災者の方を向いて、被災者の声に耳を傾けて、現状をどう改善するのかを考えなければいけない。なのに、阪神淡路大震災のときにはこうだったとか、過去の「マニュアル」に従ってしまっている。

 ボランティアが100人いれば、なかには迷惑をかける人もいるだろう。でも、みんな迷惑をかけに行っているわけではなく、助けようと思って行っている。迷惑をかけたら、ちょっと注意すれば済む話。なのにボランティアに注文ばかりをつけて、ハードルを上げてしまっている。最も重要なのは被災者の立場に立って、被災者を助けようという心がけだ。

──ボランティアの主要な受け皿とされる被災地の社会福祉協議会は、募集範囲を「県内(市内)のボランティアに限る」としているところが多い。

 極端な話、それは被災者を見殺しにしようとする行為に等しい。それでボランティアの足が止まるのだから。

 NPOなどは行政のボランティアセンターを当てにせず、自分たちでボランティアの受け入れ体制を作ろうという方針に変えた。ボランティアセンターが募集を制限する理由の1つは、泊まる場所がないからだが、NPOの中にはテントを張ったりプレハブを建てるところもあるし、被災地から少し外れれば民宿もある。

 実際はガソリンも普及し始めているし、県外の人を断る必要はない。県内では中高生までが必死で働いているが、もうみんな疲れてきている。早く外からも行って励まし、助けてあげなければいけない。

──ほとんどの社会福祉協議会が受け入れを制限しているが、被災者側のニーズはもっとあるということか。

 ニーズは歩いて探しに行かなければいけない。浸水した家の2階の電気もない場所に数家族が身を寄せ合っていて、水も食料もないと悲鳴を上げているのに、ニーズがないなんてことはあり得ない。泥にまみれた家が何万棟とあるなか、泥が固まる前に誰がかき出すのか。

 今ボランティアに行くと迷惑をかけるという世論が、どういうわけか出来上がってしまった。それを変えるのはとても大変だ。

 ボランティアは押しかけていい。迷惑をかけてもいい。迷惑かけた分の何倍もいいことをしてくればいい。来てくれただけで、本当に喜ばれるのだから。


義援金と支援金の違い 義援金は届くまで1年以上のことも
NEWS ポストセブン 4月4日(月)16時5分配信

 日本国内はもちろん海外からも続々と被災地へ寄せられている寄付金。その寄付金のなかには、義援金と支援金のふたつがあるが、その違いは?

 義援金は通常、複数の法律を組み合わせて解釈すると、日本赤十字社と、赤い羽根で知られる中央共同募金会のふたつで使われるとされる。街頭募金や企業、団体等を通して集められた義援金は赤十字社に送られ、総額が被災者に平等に分配されることになっている。公平さの一方で、こんなデメリットも。

「義援金は各自治体の被災者数や被害状況をきちんと調査して分配されるため、最終的に被災者の手元に届くまでに時間がかかります。阪神・淡路大震災の際にも、分配までに数か月かかってしまいました」(市民福祉団体全国協議会専務理事・田中尚輝氏)。今回の震災では、被災人数が多いため、調査に手間取り、被災者の手元に義援金が届くまで1年以上かかる可能性も考えられる。

 一方、支援金とは、被災者支援のために活動するNPOやボランティア団体へ贈られるお金のこと。たとえばユニセフに支援金を送った場合、今回の震災では幼児用下着など支援物資の購入に充てられ、被災地に届けられる。「送ったお金は、即、支援活動に使われることが多いのですが、団体によって使い道が異なります」(前出・田中氏)

 子供支援に使われるのか、老人介護に役立つのかなど、活動内容を明らかにしている団体を選んだほうがよい。

※女性セブン2011年4月14日号



世界最強!米の“核部隊”140人投入へ…福島第1原発事故
スポーツ報知 4月1日(金)8時5分配信

 東日本大震災による東京電力福島第1原発事故で、自衛隊トップの折木良一統合幕僚長は31日、米軍の放射線管理に精通した専門部隊約140人が近く来日すると明らかにした。放射性物質の探知、被ばく者除染などの知識、能力を備えた“対核”の分野で、世界最強の特殊部隊。緊急事態対応で、即時に現場入りはしないが、最悪すら想定内にし、危機に備える。また、この日、冷却用の真水を積んだ米軍提供の台船1隻が原発の岸壁に接岸。物資、人員ともに、米軍の協力態勢は本格化してきた。

 危機的状況の原発に世界最強部隊が、派遣される。来日するのは、米軍海兵隊に所属する化学、生物兵器攻撃、事故に対応する特殊部隊。「ケミカル・バイオロジカル・インシデント・レスポンス・フォース」の頭文字を取り「CBIRF」と呼ばれる。核兵器、事故への対応も任務で、被ばく者の除染、放射性物質の管理などの専門知識、能力を備えている。

 部隊の公式サイトによると、事故現場で汚染レベルを調査するチーム、治療を行うチームなどに分かれる。今回は初動対処の約140人が来日するという。来日直後は現地入りせず、まずは自衛隊と情報交換する。拠点とする基地、派遣時期は調整中だという。

 折木幕僚長は「あくまで緊急事態に対応するためで、そうならないよう願っている」と強調した。ただ、派遣人数は所属隊員(約450人)の約3分の1に相当し、事故の大きさを示す。21日に折木幕僚長と会談した米太平洋軍トップのウィラード司令官は「日本政府の判断次第で、いつでも(部隊を)出せる」としていた。先遣隊9人は既に来日済み。“本隊”投入に踏み切ったことは、日米ともに「緊急事態」も想定するほど、現状を重く見ている証しともいえそうだ。

 31日午後には、原子炉等を冷却するための真水を積んだ米軍提供の台船2隻のうち1隻が、原発の岸壁に接岸した。約1100トンの真水を積載。もう1隻の到着を待ち、注水準備を行う。真水用の原発タンクの容量は約3500トンで、近くのダムから取水するが、米軍船はそれを補う。米軍は機器への影響が心配な海水から、真水に切り替えるよう強く要請していた。

 事故では、米軍は無人偵察航空機「グローバルホーク」を既に投入。上空から原発の状態を撮影し、自衛隊に提供してきた。また、爆発物処理等に使うロボットの投入も計画される。事態の深刻さが増すとともに、日米の協力作戦の規模は大きくなってきた。


東電の「計画停電」という産業と国民生活破壊の愚策
[ 2011年3月31日10時00分 ]

 計画停電という「無計画」政策が産業界に与える影響も深刻だ。電力復旧のメドはつかず、長期化は避けられない。日本経済に壊滅的なダメージを与え続けるのだ。

 半導体工場が稼働停止すると、工程によっては再稼働に1週間かかる。事実上、半導体は常に電力が供給されていないと、製造できない。

「自動車工場も同じです。エンジン回りの鋳造で鉄やアルミを溶かす場合、数時間後に停電すれば溶かすわけにはいきません。半端に中断すれば、製品として売り物にならない。3時間の停電でも、前後の準備と保全を加えれば9時間も生産が止まります。こうした現場の実態を政府と東電は、まったく理解していないのです」(自動車業界関係者)

 大和総研の試算によると、計画停電が1年続けば鉱工業生産は9.2%減少し、GDPの2.8%(約15兆円)が失われるという。

 日本経済には大打撃だが、東電の無知・無策は国民の生命さえ危機に陥れている。

 東京・八王子市では、夜間の計画停電中に室内で発電機を使っていた男性(62)が、排ガス中毒で死亡。信号が止まった交差点での死亡事故も各地で相次いでいる。さいたま市の救急病院は、昏睡状態で搬送された患者に治療用の電子機器が使えず、泣く泣く10キロ離れた病院に転送した。特に大きな電力を要するMRIは、停電中は大半の病院で使用できない。製薬工場の稼働再開にも支障を与え、クスリ不足解消の妨げとなっている。

 計画停電が続く限り、救える命のともしびも消えていくのだ。エコノミストの紺谷典子氏が言う。

「地域ごとに一律に停電するのは、機械の仕事。政治の仕事は、どこの電力を優先させるかを決めることです。救急病院や医薬品工場などには早急に常時供給する態勢を整えるべきです。産業界は3時間より1日おきの停電で効率アップを求めているのに、菅政権は耳を貸そうとしない。揚げ句に対象エリアを細分化させ、余計に分かりづらくしているのだから、愚の骨頂です。このままでは、国民生活“壊滅計画”のための停電になってしまいます」

 菅政権は産業と国民生活を破壊する愚策ということさえ分かっていないようだ。

(日刊ゲンダイ2011年3月28日掲載)



関心は夏の需給対策へ=計画停電、4日連続見送り
時事通信 3月31日(木)17時1分配信

 東京電力は31日、計画停電を4月1日も実施しないことを決めた。終日停電を行わないのは4日連続。気温低下による需要増や発電設備の故障がなければ、今後も停電の頻度は少なくなる見通しだ。一方、日本経団連がこの日、4月中に節電の「自主行動計画」をまとめる方針を決めるなど、大方の関心は大幅な電力不足が懸念される夏の需給対策に移りつつある。
 東電は夏の計画停電を「最小限に抑えたい」(勝俣恒久会長)考えだが、冷房利用で電力使用量が大幅に増えるため、現在は停電対象から外れている東京23区の大半でも電気を止めるなど拡大が不可避の情勢だ。
 冬から春にかけては、電灯をつける夕方の電力使用量が一日のうちで最も多くなる。対して夏は通常、気温が最高となる午後2~3時にピークを迎える。この時間帯の使用抑制が需給対策の焦点で、工場操業や鉄道運行の調整、一般家庭では冷房設定温度の引き上げなどが現実的な対応策だ。企業も夏季休暇の分散・長期化が求められそうだ。



不安に振り回されぬよう 専門家「普段と違う状態と自覚を」
2011年03月30日00時09分 産経新聞

 デマが拡散するインターネット、飲料水の買い占めに奔走する人々。震災の影響は被災地だけにとどまらず、先行きへの不安から農家が自殺する悲惨な出来事も起きた。解消されぬ「不安」に振り回され、冷静になろうにも冷静になれない。不安が人を駆り立て、それが広がっていく。専門家は「自分が普段と違う心理状態だと自覚する必要がある」と指摘する。

 《自衛隊では支援物資を受け付けています。各県の県庁が窓口です》

 震災発生直後、メールや単文投稿サイト「ツイッター」などで、こんな“呼び掛け”が広まった。

 宮城、青森県庁などの住所や必要な物品を詳細に記した上で、協力を訴えるものだ。防衛省には「物資を持ち込みたい」との電話が殺到した。だが、実際は防衛省も各県も物資は受け付けていなかった。物資が届いた宮城県の担当者は「もし大量の物資だったら混乱は大きかった」と話す。

 《【超拡散希望】宮城県花山村はいまだ救助は来ず、餓死した赤ちゃんや老人が後を絶ちません…》

 切迫感あふれるツイッターの書き込みだが、花山村は市町村合併で平成17年に消失し、現在は栗原市。震度7を観測したが震災の死者数はゼロで、市の担当者は「餓死続出などまったくない」と困惑を隠さない。

 こうした書き込みには《悲惨な状態のようです。広めてあげてください》と、悪意でなく情報を広めている様子もうかがえる。急を要する必要性を感じて親切心から《警察に通報した》と書き込んだ人もいた。

 ネット上では《情報源の確認を》《広めるべきことか冷静に考えて》という呼び掛けも盛んだが収ってはいない。東京女子大の広瀬弘忠教授(災害・リスク心理学)は「大地震が起こると、被災地より周辺でデマや流言は起きやすい。『この先どうなるか分からない』という不安に支配されている」と分析する。

 先行きの見えない不安。それは、出荷停止を受けた福島県の農業を営む男性を自殺に追い込み、首都圏では飲料水の買い占めなど深刻な悲劇を招いている。「基準値を超えた」という情報の断片にとらわれ、「何が」「どれぐらい」「どうなるのか」という評価は置き去りにしたまま、人々は漠然とした不安に右往左往する。

 「福島で野菜が作れなくなるかもしれんな」

 福島第1原発の事故後の24日朝、家のそばで自ら命を絶った同県中部の男性(64)は不安をこう口にしていた。

 放射性物質による「風評被害」は農家だけを見舞っているのではない。

 「体は大丈夫なの? お店は平気?」

 友人にそう心配された福島市の和菓子店経営、須田輝美さん(50)は驚いた。「『福島』というだけで危険と思われているのか」。

 福島市は屋内退避地域(原発から半径20~30キロ)ではない。だが、賑わっていた周囲の街はゴーストタウンのような静けさだ。須田さんの店も日々の売り上げは震災前の3分の1以下。県外からの注文も絶えた。

 「福島は危ない、と言われ続ける。そのほうが私たちには放射能よりよほど怖い」。須田さんはつぶやいた。

 混乱は首都圏でも続く。

 「水を見つけたら、とにかく買ってきて」

 6カ月の長女を育てる東京都台東区の主婦、瀬能美津江さん(41)は夫にそう頼んだ。東京都の浄水場から乳児の摂取制限を超える放射性ヨウ素が検出された23日。瀬能さんは飲料水を求めてかけずり回ったが、「500ミリリットル入り1本しか買えなかった」。翌日、摂取制限は解除されたが「まだ安心できない」と感じる。

 神奈川県平塚市の会社員の男性(35)は妻(35)と近所のスーパーを訪れた。客が列をなし、店が入場制限している様子を見た妻は、激しい動(どう)悸(き)を訴え、こう言った。「これからどうなるの。買わなくても大丈夫なの」

 妻はストレスで過呼吸を患っている。男性は「周りを見て“何か買わなければ”という気持ちになったようだ」と話す。震災後、首都圏で食品などが品薄になった後に、基準値超えの水道水が相次ぎ、混乱に拍車が掛かった。

 蓮舫消費者行政担当相は25日の会見で、「品薄状態は解消されつつある」と述べ、「引き続き、冷静な購買行動をお願いしたい」と訴えたが、冷静さは戻らない。

 三重県に住む主婦(63)は、1リットルのミネラルウオーター15本と、お茶のペットボトルも20本買った。「被害は何もないが、とにかく不安。何を信じていいか分からないからいっぱい買ってしまう」

 群衆の行動や心理について詳しい新潟青陵大大学院の碓井真史教授(社会心理学)は「現在、自分が普段と違う心理状態だと自覚する必要がある」としたうえで、こうアドバイスする。

 「一部の極端な行動で多くの人が脅かされる。そういうことを皆が理解し、協力しようとすれば、パニックは避けられる」(高橋裕子、森浩)








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